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【討議資料】
「リバースモーゲージ」をめぐるたたかいについて
2007年10月22日 全国生活と健康を守る会連合会
(一)「リバースモーゲージ」に対する私たちの基本的立場
全生連は、2007年1月20日に「生活保護でのリバースモーゲージの実施を中止させるために」との討議資料(「生健誌」2007年4月号掲載)を発表しました。各組織は、討議資料にもとづき、憲法や生活保護法に反し、保護の申請抑制と受給権を奪う「リバースモーゲージ」制度(新貸付制度)の実施の中止を求める運動を強めてきました。対象となる人たちの切実な実態と怒りを結集し、自治体交渉や各社会福祉協議会との懇談などにとりくんできました。
新貸付制度は、(1)高齢者の自宅を担保に借金をさせて生活保護を受けさせない制度であり、国民が生活保護制度をますます利用しにくくするものです。(2)住み慣れた住居を「資産の活用」の名のもとに奪うことは、人間らしく住み生きる権利を侵害するものです。(3)強制的に新貸付制度を利用させて相続を認めないやり方は、人間の尊厳(憲法第13条)に根ざした「自由に幸せに生きる権利」を認めないものです。くらしの大変さを見ないで「扶養できない相続人」を悪者扱いにし、国民を対立させるやり方はやめるべきです。
全生連は、こうしたことから、新貸付制度の実施を中止することを求めます。そのために、全国の組織が、(1)この制度の不当性、くらしの実態と怒りの声を多くの人たちに知らせる宣伝を強めましょう。(2)対象になる人も参加して、自治体との交渉をおこない、本人が一言でも訴えるようにしましょう。(3)貸付業務をおこなう社会福祉協議会との懇談をおこないましょう。(4)国民の最低生活を保障させる立場から、社保協など共闘の場でこの問題を訴え、支持と共感や共同の行動を広げましょう。
各組織で、こうした実施の中止を求める運動を強めましょう。そのうえで、新貸付制度を活用するかどうかは、強制ではなく、本人の自由意志で決めるものです。新貸付制度の利用を希望しない場合は、次のようにとりくみ、生活保護の適用と制度改善をさせましょう。
(二)新貸付制度の利用強制による保護却下などを許さないために
新貸付制度の手続きの主な流れは、貸付申し込み〜推定相続人の同意〜不動産鑑定士の調査〜保護の廃止で、それぞれの段階で、手続きを拒んだ場合は生活保護法第27条による「指導・指示」がされ、厚労省は「指導・指示」を拒んだ場合は保護の廃止を行うとしています。いよいよ多くの自治体で新貸付制度が実施されようとしているもとで、申請却下や調査、廃止処分などに対するとりくみを強めましょう。
(1)新貸付制度の対象者について
貸付の対象者は、(1)借入申込者及び同居の配偶者がともに65歳以上であり、貸付を受けなければ生活保護の受給が必要な世帯で、(2)貸付対象となる不動産(土地・家屋)の資産評価額は概ね500万円以上の不動産を保有している世帯です。ただ、厚労省は、世帯内に重度の障害をもつ子どもが同居しているなどの場合は、「将来にわたって居住させ、貸付の指導をおこなわないこともある」としています。「将来にわたって居住」が必要な実態を明らかにし、「自立助長」のために貸付を指導しない対象者のワクを広げさせましょう。
(2)申請拒否をさせないために
厚労省は、新貸付制度の対象となる申請者については、まずは申請を受理するとしています。しかし、現実には「持ち家の場合は売却してから」などと自治体によっては申請すら拒否する可能性があります。「申請権を侵害することはあってはならない」との厚労省の「通知」(2007年9月6日厚労省・生活保護関係全国係長会議)も示して、申請拒否をやめさせ、申請を受けつけさせましょう。
(3)申請却下を許さないために
厚労省は、申請は受理しても、新貸付制度の利用を拒む場合は保護申請を却下するとしています。ただ、新貸付制度の「借入申込から貸付の決定までに1月以上を要する旨の連絡を社協から受けた場合や急迫状況にある場合には、一旦保護を決定」するとしています。実際には、新貸付制度の申込から貸付の決定まで、1か月以上、3か月もかかる自治体もあります。したがって、保護の申請をし、まず保護を決定させ、最低生活を保障させましょう。
(4)生前贈与などをしている場合
厚労省は、すでに相続や生前贈与をしている場合は、「新貸付制度の適用を免れるために生前贈与を行ったものと疑われる場合については」、名義変更した上で貸付申請するか、売却指導をするとしていています。「疑いがある」として、国民を「犯罪者」扱いにすることは許せません。相続は、憲法24条、29条は「個人の尊厳」にもとづき財産権は侵害してはならないとしており、生前贈与や相続を認めさせましょう。
(5)調査に対して
この制度での主な手続きは、利用の契約、推定相続人の同意、家屋の調査などが前提になります。本人と社会福祉協議会との契約の形になりますから、本人への十分な説明が必要です。推定相続人には、貸付制度の申請(相続権の放棄)への同意が求められます。厚労省は、推定相続人が同意を拒否した場合でも、その意思にかかわらず、貸付制度の手続きをすすめるとしています。家屋の調査は、不動産鑑定士が行い、この調査についても同意が必要になります。これらの調査は、いずれも行政手続法の「行政指導」にあたるものであり、本人に強制できるものではありません。
したがって、本人や推定相続人と一緒に「どうするか」よく話し合い、納得できない場合は、福祉事務所との交渉や「指導・指示」が出された場合の審査請求などでたたかいましょう。不動産鑑定士については、利用者本人が選んだ不動産鑑定士に調査をしてもらうよう要求しましょう。
(6)廃止処分に対して
厚労省は、新貸付制度の対象者が利用を拒んだ場合、生活保護法第27条の「指導・指示」をおこない、保護の廃止をおこなうとしています。廃止ではなくて、「停止」することも実施機関の判断でできるとしています。「指導・指示」は、書面でおこない、行政手続法による「聴聞」などをおこなわねばなりません。また、「指導・指示」は、27条の2項、3項で「本人の意に反して強制できるものではない」としています。廃止・停止の不当性を追及し、「聴聞」などをおこなわせ、撤回させましょう。
(7)審査請求と裁判提訴について
申請却下や「指導・指示」、停・廃止処分に対して、県知事に審査請求をすることができます。「指導・指示」に対する審査請求は、厚労省は「行政処分ではないから」できないとの解釈を示しています。しかし、1993年の秋田・加藤訴訟判決は、将来の介護費用のための81万円の預貯金の使途を葬式などの費用に限定するよう求めた指導・指示は、行政処分であるとしました。新貸付制度の利用を拒んだ場合の指導・指示は、直接保護の停・廃止という処分につながるものであり、審査請求の対象になるのは明らかです。不当な処分に対して、積極的に審査請求をおこしてたたかいましょう。
審査請求を行って県知事などの裁決に納得がいかない場合は、裁判所に提訴するという方法もあります。厚労省は、裁判が提訴された場合の本人の生活保障について、「一時的に保護するか、生活福祉資金の貸付かになるのではないか」としています。本人ともよく話し合い、各組織の役員会で討議し、裁判の提訴も検討しましょう。
以上
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