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東京のJR新宿駅から徒歩20分の所に、障害者の靴(特殊靴)を製造している「さとう靴補装具工房」があります。障害者自立支援法で採算が合わない経営のなかでも、笑顔を絶やさず靴を作りつづける「守る新聞」読者の佐藤千尋(ちひろ)さん(54)を訪ねました。
佐藤さんは特殊靴の注文主を「お客さん」とはいわず「患者さん」と呼びます。
「患者さんの靴は、ギプスや義足と同じでね、歩いて体を動かすと筋肉が発達するでしょう。治療する意味もあるんですよ」。
健常者の靴と違って、はきこんで足になじんでしまってはだめだそうです。「患者さんの足の関節を過度に曲げないストッパーの役割や、歩く際に足が変形しないようにサポートするのが重要」。
この工房には、特殊靴の完成品は置いてありません。「だって出来上がりは、いま患者さんがはいている」。
じゃあ、ここにあるのは?
「修理の依頼と、あとは失敗作(笑)」デザイン性を求めると、ラスト(木型)を抜いたときに皮が破れたり、リウマチなどの患者さんが病状が悪化して当初より足が変形してしまったそうです。
ここにも「自立支援法」の影響
「東京では、自治体や福祉事務所に靴を製作するための採型書を提出すると、あとで変更するのはものすごく大変。もっと柔軟に対応してほしい」と訴えます。特に「福祉はぜいたくだ」と豪語(ごうご)する都知事が就任してから、経営はさらに厳しくなったそうです。
特殊靴は、スリップオン(紐なし)タイプのもので一足約7万円。障害者自立支援法によって、厚生労働省が提示する告示価格では、特殊靴は安くて全く採算に合わないといいます。
「足型をとったり、ラスト(木型)を作る手間やパターン作り、裁断、縫製、釣り込み、材料費を考えると、疾患によっては残念だけど採型を断ることもあります」。
さまざまな障害 手探りの勉強
障害者の特殊靴を作るには、「義肢装具士」という国家資格の取得が必要です。
佐藤さんは若いころから登山に親しみ、21歳のときに、登山靴製造では指折りの職人のもとに弟子入りします。当時、サラリーマンの平均月収が約7万円の時代に、登山靴は3万円もする高価なものでした。
工房には、一から靴を作る技術があったので、登山中に凍傷で足の指を失った人はもとより、小児マヒ、両足の長さが違う人たちなどから「何とかならないか」と、登山靴以外にも次第に注文が入るようになったそうです。
「でも実際に作るのは面倒、一番下っ端だったぼくに仕事が回ってくる」。そんな経験から障害者の靴に対する意識が生まれます。
「当時はだれも仕事を教えてくれなかったし、自分で勉強する以外になかった」。まるで手探りの日々が続き、35歳のときに「義肢装具士」となります。
仕事して一番うれしい瞬間
「以前、交通事故で右足に障害が残って、見るからに精神を病んでしまった女性の患者さんが訪ねてきてね、ぼくの作った靴をはいたら『何で私こんなに速く歩けるの?』って、すてきな笑顔で笑った。靴屋のオヤジには最高のしあわせ」。
ホームページアドレス/http://www10.ocn.ne.jp/~pade/
(2008年6月29日号「守る新聞」)
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