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発熱時に検査してもらえるのか心配

コロナ対策で欠かせない検査(PCR)と医療の現状と改善策

全国保険医団体連合会事務局長 中 重治

 新型コロナウイルス感染症拡大で全国に出されていた緊急事態宣言が解除されました。しかし、再び感染が広がったところもあり、いつまた感染者が増えるか心配する生活が続いています。感染拡大防止のため、感染者の早期発見に有効なPCR検査は、検査数がなかなか伸びていません。このような状況のPCR検査について全国保険医団体連合会事務局長の中重治さんにお聞きしました。

緊急事態解除

第2波に備える

 緊急事態宣言が全国的に解除され、段階的な経済活動再開が進んでいます。
 6月1日からは、学校も再開されました。しかし、北九州市では感染者が増加し、第2波の到来との指摘もあります。
 第1波の教訓も踏まえて、今、するべきことは何なのか、考えてみましょう。

感染防止と経済

両立には早期発見

 大事なことは、感染防止と経済活動を両立させることです。そのためには、感染実態を正確につかむことが必要です。「今の10倍以上の感染者がいる」と指摘する専門家もいますが、正確な感染者数は誰にも分かりません。
 なぜなら、感染者を把握するPCR検査の数が圧倒的に少ないからです。経済協力開発機構(OECD)加盟国37か国の中で1000人当たりのPCR検査の数は、メキシコが最低で次が日本です。感染症対策で評価を受けている隣の韓国は、1000人当たり15件、日本は3・4件(5月20日時点)です。
 新たな感染者が減少している今こそ、PCR検査を大規模に実施して、感染者を早期に発見し、保護・隔離を図ることでウイルス感染の封じ込めが可能になります。
 症状のない感染者をつかむことは、医療機関における院内感染を防ぐ上でも重要です。
 PCR検査は、唾液でできる簡便な方法が保険適用されました。
 短時間で判定ができる抗原検査や感染歴が分かる抗体検査などと組み合わせて、拡充することが求められます。
 それでは、なぜこれまでPCR検査の数が増えてこなかったのでしょうか。
 3月6日に、医師が感染を疑った場合には、PCR検査が保険でできるようになりました。安倍首相は当時、「1日1万5000件の検査ができる」と言いましたが、実際は最高時でも1日8000件程度でした。
 最大の原因は、検査に至る基本的なルートが保健所の運営する「帰国者・接触者相談センター」に相談をして、そこがOKすると「帰国者・接触者外来」を紹介され、受診して「感染の疑いあり」となって初めて検査という仕組みになっていたことがあります。
 発熱などがあっても、「外国にも行っていないし、感染者との接触の覚えもない」ということで「相談センター」ではじかれる人が続出しました。
 医師が問い合わせても、断られる例もありました。

検査数増のために

体制拡充が急務

 検査件数が検査能力に及ばない理由はさまざま考えられますが、「帰国者・接触者外来」がほとんどの検査を担う形になり、医師会などの主導する「PCR検査センター」や「ドライブスルー検査」が後追いになったことが大きいと思います。
 第1次補正予算では、検査体制拡充の予算が個別には計上されませんでした。
 さらに、歴史的な経過もあります。2009年の新型インフルエンザの流行を踏まえて、10年6月に厚生労働省の専門家会議が報告書をまとめました。そこには「とりわけ、地方衛生研究所のPCRを含めた検査体制などについて強化する」と明記されました。ところが、この警告は生かされませんでした。
 SARS(サーズ)(重症急性呼吸器症候群 02年〜03年)やMERS(マーズ)(中東呼吸器症候群 12年〜)の爆発的感染から日本が免れたという事情もありますが、根本的には保健所の統廃合にみられる医療、公衆衛生軽視の政策があります。
 第2波に備えて、抜本的な見直しが必要です。
 国民世論の力が、1人10万円の給付金を実現させました。長年続いた新自由主義に基づく医療費抑制、患者負担増の政策、格差と貧国の拡大路線を「抜本的に見直そう」の声を今こそ大きく広げていきましょう。

(2020年6月14日号「守る新聞」)

 
   
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