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大阪・八尾 母子餓死事件から1年

調査団 真相解明の検証委つくれ

 2020年2月、大阪府八尾市で57歳の母親と24歳の長男が餓死する事件が起きました。貧困問題に取り組む学者や弁護士と、八尾生活と健康を守る会、全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)、八尾社会保障推進協議会などが昨年6月に調査団を立ち上げ、調査してきたことを基に2月16日、八尾市に要請を行いました。八尾市として事実確認に務めた形跡はありませんでした。

 調査団は2月16日、再発防止のため事実関係を調査する第三者による検証委員会の設置や、ケースワーカーの増員など4点を市に要望しました。しかし、市側は「しかるべき対応をとらせていただきます」と述べるにとどまり、設置の意思は示しませんでした。
 調査団は関係者に聞き取りなどをして克明に母子の生活状況を調べてきました。昨年2月22日、2人が亡くなっているのを母親の介護で来たケアマネージャーが発見。2人は立て続けに死亡したとみられます(詳しくは「経過」の表参照)。

1人分の保護費

さらに2万円の返還金

 調査団によると、八尾市は就労不安定な長男に対し繰り返し保護を廃止し、親子の同居を知りながら母親1人の保護費しか支給せず毎月2万円の返還金を徴収していました。
 18年11月、長男が木工製作所で働き始めると長男が祖母宅に転出したとして長男を「世帯員削除」した後は、母の単身世帯としました。しかし、祖母は「孫と暮らしたことは一度もない」と述べています。長男が19年1月に仕事を辞めた後は、母親単身の保護費だけで母子2人が生活してきたことになります。
 19年6月、18年暮れに支給した転居費用の20万円の一括返還という不可能なことを求め、結果的に法外な月2万円の分割払いを約束させます。
 親子が19年12月と20年1月の2か月分の保護費を受け取りに来ていないにもかかわらず、安否確認を行わず保護を廃止しました。
 調査団共同代表の尾藤廣喜弁護士は、記者会見で「生活保護を利用しているにもかかわらず、親子が死亡する事態に陥っているのは極めて異常だ。福祉の存在意義が問われている」と話しました。

稼働年齢層が減少

「辞退」「転出」を強要

 八尾市の生活保護の構成を見ると稼働年齢層が一貫して減少しており、特に母子世帯の減少傾向が顕著です。
 調査団は、過去3年間の保護廃止総数に占める「親類縁者の引き取り」「他市転出」「辞退」の割合が、2〜3割と高い実態を明らかにしました。大阪府の監査でも不適切な辞退による廃止事例が繰り返し指摘されています。
 調査団は「稼働年齢層について真に要保護性が消滅したか確認することのないまま、『親類縁者の引き取り』『他市転出』『辞退』などを理由に安易に保護を廃止していることが強く疑われる」とし、この点も検証委員会で分析してほしいと要望しました。
 調査団では今後、大阪府の監査報告を分析すると同時に、現地でビラを配布して「なんでも相談会」を開くことにしました。
 調査団の一員である八尾生健会の吉川均事務局長は、「市内でこんなにひどい保護行政が行われていたことに怒りと悲しみでいっぱいだ。弁護士や大学教授、社保協、元ケースワーカーのみなさんとともに力を尽くし、市の態度を変えさせるまで世論をつくっていきたい」と語っています。

(2021年3月21日号「守る新聞」)

 
   
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