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生活保護基準引き下げ違憲訴訟

千葉・静岡で勝訴 勝つ流れできた

 政府は2013年から15年にかけて生活扶助基準を平均6・5%、最大で10%引き下げ、年間総額670億円削減しました。この減額の取り消しを求めた生活保護基準引き下げ違憲訴訟で千葉地裁は5月26日、静岡地裁は同30日に、それぞれ生活保護法に違反すると減額の取り消しを認める判決を言い渡しました。同種の裁判は30の裁判が行われており、これまでに21地裁で判決が出され、千葉で10勝目、静岡で11勝目となり勝敗は逆転しました。(前田美津恵)

うれしい、良かった

原告が実名出し訴え

静岡

 静岡地裁では午後1時10分からの判決を前に100人以上が傍聴券を求めて並び、60人が入廷しました。
 菊池絵理裁判長は「厚生労働大臣の判断に過誤・乱用があり、生活保護法3条、8条2項に違反する」とし原告の主張を認める判決を言い渡しました。
 弁護士会館に移動し、生存権にかかわる裁判を支援する静岡の会主催で報告集会が開かれました。弁護団長の大橋昭夫弁護士は「提訴から8年と長い裁判になった。東京などの関東と静岡で勝ち、東京高裁の管内で勝った。勝っていく流れができた。自分の顔と名前を出して訴えた6人の原告に感謝する」と喜びをかみしめながら話しました。
 弁護団事務局長の安部浩基(こうき)弁護士は「『ゆがみ調整』については基準部会に聞いている。しかし、『デフレ調整』は聞いていない。“独断でやった”ということだ。私たちは憲法25条を具体化した生活保護法の8条2項、『必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分で、かつ、これをこえないもの』に従っていないと主張してきた。これが認められた」と説明しました。
 支援する会の笹沼弘志共同代表(静岡大学教授)は「なんといっても原告のみなさんが生活が苦しい中、訴えるだけでもバッシングを受ける中で乗り越えてきた」と話しました。
 静岡県生活と健康を守る会連合会の水谷陽一会長の紹介で原告が発言。掛川北生健会の小野川泰さんは「みなさんの協力で頑張ってこれて、こんないい結果となった」。袋井市の須川益雄(みつお)さんは「病気療養で他県に転居したが、裁判に参加することができた。ありがとう」。
 浜松生健会の山本定男原告団長は「おめでとう。こんなにうれしいのは何十年ぶり。原告になり闘ってきて本当に良かった」と晴れやかに発言しました。

首都圏すべてで勝訴

生活実態とらえた判決

千葉

 千葉県での生活保護基準引き下げ違憲訴訟の判決が5月26日午後3時、千葉地方裁判所でありました。内野俊夫裁判長は、生活保護基準引き下げ処分を取り消せという原告の訴えを認める判決を言い渡しました。
 2013年から3回に分けて生活保護の支給額を引き下げた千葉市、習志野市、富里市、市川市、船橋市、鎌ヶ谷市、 市原市、 松戸市、 流山市を相手に、生活保護利用者12人が保護変更決定処分(生活保護費引き下げ)の取り消しを求めた裁判です。
 千葉地裁は、いわゆる「ゆがみ調整」については、厚生労働大臣の裁量権の逸脱・乱用はないとしましたが、「デフレ調整」については、生活扶助相当CPIが生活保護受給世帯の消費構造を適切に反映しているとは認められず、デフレ調整がゆがみ調整に含まれている生活扶助基準額の水準の改定との整合性もないとして、厚労大臣の判断過程および手続きに瑕疵(かし)があると判断しました。
 東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏すべてでの原告勝訴判決は画期的であり、極めて異例なことです。
 判決言い渡し後、裁判所前で「完全勝訴」「違法性認める」の垂れ幕を掲げる弁護団と原告に、支援者一同から大きな歓声と拍手が起きました。
 午後4時から判決の報告集会が約40人の参加で開かれました。弁護団からは、判決文164ページの骨子部分を要旨として渡され説明がありました。
 また「証人尋問で生活保護利用者がどういう暮らしをしているか強く訴えた。大阪高裁判決から逃げずに、生活実態を深く裁判官がとらえ、それに見合う真正面から受け止めた判決だった」と報告がありました。原告の一人は、「ほっとした。元の生活保護基準に戻してほしいという訴えが認められてうれしい。みなさんに感謝したい」と話しました。
 (大橋廣志さん、小山真樹通信員)

(2023年6月11日号「守る新聞」)

 
   
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