障害者加算削除返還問題
秋田県が処分取り消す裁決
「憲法の趣旨に合わない」と市長が謝罪
2年前の2023年7月以来「あなたへの障害者加算支給は間違っていた、市のミスだが支給した分は返還してもらう」と告げられた約120人の精神障害者たちは驚きました。秋田生活と健康を守る会の会員3人が処分の取り消しを求めて県に不服審査請求を起こしていました。7月11日、この「障害者加算削除返還問題」でついに秋田県知事が「市の返還決定処分は違法、取り消す」と裁決しました。秋田守る会の後藤和夫会長からの報告です。
返還請求はしない
秋田市の沼谷純市長は7月29日、返還取り消しを求めている当事者や秋田生活と健康を守る会、自由法曹団秋田県支部、きょうされん秋田支部の代表者に対し「秋田市として皆さんに寄り添う結論を早期に出せなかったことについて、心からお詫び申し上げたい」と謝罪し、すべての当事者について「返還請求はしない」決意を表明しました。
心からよかった
多くの人が返還金額が何度も浮かんで眠られず体調を悪化させ、「いっそ自ら命を絶ったほうが楽になるのでは…」と何度も思った40歳女性は返還取り消しの知らせに「金銭的な問題ももちろんですが精神的な苦痛が緩和され心からよかった」と手紙を寄せました。
審査請求人の田森小百合さん(63)は「私たちだけでなく全員の返還を取り消しゼロにしてほしい」とみんなの思いを必死に訴え、市長の「私の言葉を信じてほしい」との約束を引きだしました。
手帳の等級で認定を
前市政時代に発生した人権侵害事件。前市政は、かたくなに厚労省の2012(平成24)年課長通知にこだわり120人を苦しめ続けてきました。「課長通知には費用返還を求めることで最低限度の生活保障の趣旨に反する恐れがある場合または世帯の自立を阻害する恐れがある場合、費用返還をさせないことが相当であると実施機関が判断できる規定はない」との主張は県知事裁決で全面否定され、「(返還決定は)裁量権の範囲を逸脱し濫用したものとして違法というべきである」と断じられたのです。
秋田市は国に精神障害者への加算を精神障害者保健福祉手帳の等級で認定する改善を迫るとともに、憲法13条・25条等にふさわしい生活保護行政と市政の姿を市民に示すことが求められています。
◆(市長表明)自立更生費をどう見るかといった技術的な話でなく、日本国憲法に基づく最低限度の生活を保障する生活保護費について返還を求めること自体が生活保護制度、日本国憲法の趣旨に合わない。分割であっても少額であっても返還請求すること自体が現在の最低限度の生活を損なう可能性がある。
(2025年8月24日号「守る新聞」)